2014年4月7日月曜日

釈迦堂口やぐら群


大町釈迦堂口遺跡


名越ヶ谷の最奥にある「13世紀以降に建てられた寺院跡」としかわかっていない大町釈迦堂口遺跡には、64基ものやぐらが現存しています。原型をとどめない風化したものもありますが、等身大の地蔵像が浮彫されたものや、日月やぐらと呼ばれる独特な納骨穴を持つものなど、史跡としての価値の高いやぐらが混在しています。ということで、今回は大町釈迦堂口遺跡のやぐらにスポットを当ててみました。

Google Map 大町釈迦堂口遺跡

上地図画像は大町釈迦堂口遺跡周辺です。荼毘跡が検出された平場を囲うようにやぐら群(①~⑤)が存在します。典型的な鎌倉寺社の様相です。石切り場跡の辺りからやぐらが見られなくなるので、ここにあった寺院の境界線があの辺りだったと考えられます。それにしてもあの平場にどのような建物があったのでしょう。


失われたやぐら


『鎌倉市史 考古編』に「宝戒寺の普川国師入定窟と伝えられている」というやぐらの記述がありましたが、これはどうやら宅地造成で失われている模様です。群中で最大のもので、また付近のやぐらからは「元亨」と刻んだ板碑片や「正慶二二月○三日」の刻銘があった五輪塔地輪に、火葬しない多量の人骨が出土したとありました。それが何処なのかいまいち判然としませんが、とにかく他のエリアではここまでの遺物が発見されていないので、よりによってやぐら群の最も核となる重要なエリアが失われてしまっているようです。

石切り場跡 巨大な岩石がそこら辺に転がっている


エリア名の由来


上地図画像でも記したそれぞれの箇所の名称ですが、例えば「裏門跡」といってもこれはここにあった謎の寺院の裏門だったという訳ではなく、以前の土地所有者がそのように見える地形形状をそう表しただけのことなんだそうです。下画像のように当時の土地所有者が作成したと思われる看板が未だに所々で残されています。どれくらい昔のことなのかわかりませんが、以前はこうしてその所有者が一般に開放していたそうです。ですから「南亭」や「唐糸やぐら」もその所有者の空想の仮説と思われます。ただ、こうして釈迦堂口遺跡の説明をする際に便利なので私も今回使用しました。

唐糸やぐらの案内板


日月やぐら群


地図画像①の釈迦堂切通のある丘陵頂部尾根上に日月やぐらと呼ばれる一群があります。これも現地にあった案内板に記されていたものですが「壁に日と月になぞらえた納骨穴があるので日月やぐらと呼ばれています」などとありました。市史にはこのような記述はありません。特徴は一つに円形の龕が壁面に施されていることです。市史によれば納骨のために往時は蓋で塞がれていたであろうと推測しています。その他瓔珞(装身具)や梵字が刻まれています。鎌倉期のやぐらです。

日月やぐら
日月やぐら群

日月やぐらのある尾根の一段下にまたやぐらが一列に並んでいます。10基ぐらいかと思いましたが、市史に20基とありました。風化が進み半分地中に埋もれているはでよくわかりませんが、羨道がないので室町期のものと考えられるようです。釈迦堂切通の上に見えるものです。


南亭やぐら


日月やぐらから尾根を伝って行くと南亭と呼ばれる辺りに出ます。ちょっとした平場に3つの穴が開いたやぐらがあります。このような形状のものは他で見たことがありません。また、発掘調査かなんかの名残りでしょうか、底面が削られていたりします。興味深い不思議なやぐらです。

南亭やぐら
底面

地蔵やぐら


裏門跡から近い場所に等身大の地蔵坐像が浮彫されたものがあります。この地蔵像もさることながら、両脇にある五輪塔のサイズもなかなかです。市史に首を失っているとあったので、どうやら現在の首は新しく取り付けたもののようです。

地蔵やぐら

その他やぐら群


その他地図画像の②③⑤の辺りにもやぐらが集中しています。石切りの影響があるのかもしれません。やぐらなのか石切り跡なのか私では判別できない箇所がいくつかありました。とにかくこの中世の宗教施設跡の様相にあたかも別世界にいるような雰囲気です。



宝戒寺が関与か


宝戒寺が釈迦堂口遺跡の裏山となる衣張山に寺領を有していたとありました。また『よみがえる中世【3】』によれば、宝戒寺が現在地に建立されるまでに空白の20年間があるとも記されています。前述したように、宝戒寺の普川国師入定窟と伝えられているやぐらの存在を合わせて考えると、もしかしたら宝戒寺が・・。
なんて色々と仮説が浮かんできますが、あとは皆さんの想像にお任せします。ただ、謎のままである方が魅力的だったりすることもありますよね。




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探索期間 2011年7月~2013年5月
記事作成 2014年4月7日


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