2014年10月1日水曜日

宝戒寺


山号寺号 金龍山円頓宝戒寺
建立   建武二年(1335)
開山   円観慧鎮
開基   後醍醐天皇


宝戒寺は若宮大路の東側となる小町に所在します。滅亡した北条氏の霊を弔うため、そして修行道場として後醍醐天皇が足利尊氏に命じ建立させたと云われています。宝戒寺が建つ場所は鎌倉時代では北条氏得宗家が邸地としていました。

宝戒寺

宝戒寺縁起


建武二年三月二十八日付けとなる足利尊氏の寺領相模国金目郷半分の寄進状案に「後醍醐天皇が北条高時の旧居に円頓宝戒寺を建てらる」と記されていることを『鎌倉市史 社寺編』(以下市史)で紹介しています。また、寄進状は建武二年三月二十八日付けで、尊氏が寄進した寺領は鎌倉時代末には二階堂摂津伊勢入道(行意)の所領となっていました。元弘の乱で収公され尊氏に宛がわれたのであろうと推測されています。北条氏が滅びた後の生々しい戦後処理の様子が少しだけ伝わってくるようです。

本堂

宝戒寺の空白の20年


縁起に建武二年(1335)建立とある宝戒寺ですが、市史によれば、宝戒寺そのものができたのは文和三年(1354)頃だとあります。ですから後醍醐天皇は宝戒寺を建てるつもりで寺名と敷地と住持を決めたものの、結局は何もしなかったことになります。実際にも京にいた開山の慧鎮がそもそも関東に来たことがあるかどうかも疑問視されています。弟子の惟賢が実質上宝戒寺の運営を行っていたと考えられます。宝戒寺の空白の20年とはこのことを云います。


徳崇権現


徳崇権現はその名のとおり北条氏の嫡流得宗(徳崇)家を祀ったものです。もしくは北条高時を弔っているのかもしれません。境内の一画にあります。

徳崇権現

宝戒寺古絵図


画像は『新編鎌倉志』宝戒寺項挿絵です。2ページに渡って描かれているので、中心部に空白が生まれてしまいます。境内の様相がかなり現在とは異なります。本堂(地図画像①)らしき建物が南(挿絵は東が上になっている)を向いていて、さらに徳崇権現(地図画像②)が境内奥に建てられています。

『新編鎌倉志』宝戒寺項挿絵
①宝戒寺本堂 ②宝戒寺徳崇権現 ③滑川 ④紅葉山やぐら(推定) ⑤東勝寺跡 ⑥小町大路

紅葉山やぐら


滑川に架かる宝戒寺橋を渡ると、紅葉山やぐらと呼ばれる史跡が残されています。戦時中に防空壕として改変されてしまい跡形もありませんが、海蔵寺の十六井と同じ形式のやぐらだったそうです。フェンスが施されていて、とりあえず横穴があったのだろうということぐらいしかわからないためわざわざ見に来るほどの史跡ではありません。また、宝戒寺と東勝寺跡に近いという立地関係からも、もしかしたら北条氏に関するやぐらだった可能性は高いのかもしれません。

滑川を渡って紅葉山やぐらに向かう
紅葉山やぐら
紅葉山やぐら内部 すっかり防空壕になっている

東勝寺跡


宝戒寺より葛西ヶ谷の奥に行くとあるのが東勝寺跡です。北条氏得宗家の菩提寺で幕府滅亡時には詰の城としても活用されました。新田義貞の鎌倉攻めにより北条一族及び関係者800名以上がここで自害しています。跡地には腹切やぐらと呼ばれる横穴が残されていて、北条一族らの遺骨が納めらているとも云われています。現在も宝戒寺によって手厚く供養されています。

葛西ヶ谷東勝寺跡
腹切やぐら

宝戒寺長老二世普川国師惟賢


宝戒寺長老二世の惟賢は普川国師とも慈源和尚とも呼ばれていました。足利尊氏の二男とも云われていますが、年齢を調べると尊氏より先にこの世に生まれてきているようなので、この言い伝えは全くのデマとなります。そして大町釈迦堂口遺跡には、その普川国師が入定したと云われるやぐらがあったと伝えられていますが、宅地開発によって既に失われている模様です。たいへん筆まめな人で写本など多くの資料を残した和尚さんだったそうです。

大町釈迦堂口遺跡

萩寺


宝戒寺は萩寺とも呼ばれています。9月頃に咲くこの萩の花で境内が埋め尽くされます。バラのように派手な花ではありませんが、日本人のDNAにある奥ゆかしさのようなものを感じさせる美しさです。

9月の宝戒寺



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探索期間 2014年7月 9月
記事作成 2014年10月1日


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