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横穴プロローグ
龍宝寺の裏山にある急峻ないかにも怪しい地形を眺めていると、玉縄城に隣接する土地柄上何か城郭のようなものが施されていたのではないかと考えずにはいられません。そんなとき、さらに怪しい地形を発見しました。斜面をズルッズルッと降りていくとありました!横穴!玉縄城が近いだけに抜穴疑惑のあった住吉城跡の「くらやみやぐら」を私は思い出しました。もしかしたらこの横穴は玉縄北条氏の緊急時の抜穴ではないかと・・
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急峻な斜面に何か人工的な造作がみえる |
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横穴があった! |
実は昨年(2013年)にここ龍宝寺に訪れた際、この横穴の存在を知りました。大げさな言い方をしてしまいましたが、横穴は抜穴でもやぐらでも古墳時代横穴墓でもありません。近づいたところどうやら防空壕の類のようです。この横穴がとてつもなく深そうなこと、そして地面が水没していたのがネックだったためそのときは潜入を断念しましたが、今回は長靴・レインコート・LEDペンライトと、洞窟潜入に必要最低限なものを用意して挑みます。下地図画像③には往時では龍宝寺の前身となる瑞光院(香華院とも)が建てられていました。玉縄城に隣接するこの地に抜穴が施されていたと考えるとどうでしょう。すごいロマンがあります。つまり防空壕はその抜穴を原型に造成されたのではないかと私は考えました。というかそう考えると気分も盛り上がります。
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Google map 龍宝寺周辺 ①岡本神社 ②供養塔跡平場 ③山居(栄光学園) ④諏訪神社 ⑤見晴ポイント ⑥横穴 ⑦龍宝寺 ⑧見晴ポイント ⑨玉泉寺 ⑩鐘楼 ⑪堀切 ⑫見晴ポイント ⑬七曲坂 ⑭玉縄城主郭跡 ⑮大船フラワーセンター |
横穴概要
この横穴(地図画像⑥)のある斜面の反対側に学校グランド(地図画像③)があります。つまり玉縄北条氏の菩提寺で龍宝寺の前身となる瑞光院(香華院とも)があった場所です。少しだけそちらを見させてもらったところ、塞がれていますがこの横穴の出口部分と思われる箇所が確認できました。ですから横穴は目測で30mぐらいでしょうか。出口部分まで行って帰ってくるというまさに「くらやみやぐら」と同じような展開と規模の探検になるかと思われます。
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横穴の反対斜面にある出口部分と思われる箇所 |
横穴潜入
鎌倉市内に残されている防空壕はゴミなどの廃棄物で入口を覆い侵入者を萎えさせて阻む手法が用いられていますが、ここ龍宝寺の横穴はさすがにこんな所を誰かに見つかるとは思わなかったのでしょう。比較的キレイです。
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入口 |
入口を入ってすぐにクランク状に曲がりさらにまたクランク状に曲がります。この典型的な防空壕の造りにこの時点でこれが中世の抜穴ではないということがわかりますが先に進みます。そうです、なんだかんだと理由をつけて洞窟探検をしたかっただけなんです。
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第一クランクを曲がったところ |
地面が水没してぬかるんでいるため歩きにくくなっています。ちょっとしたことでよろけてしまい体のどこかが壁に当たります。壁に触れると泥が付いてしまいます。レインコートまで用意していたのはこのためです。第二クランクを曲がったところで、この洞窟がとてつもなく深いことに気付きます。奥まで光が届きません。さらに水没度がここから深くなります。感覚的にはくるぶしまで水がきているようでした。面白い事に左手にも並行して奥に進む道があります。何故そんな複雑な造りなのかと悩みますがそのまま奥に進みます。
まさかの展開
第二クランクから奥に進むと、なんと、思わぬ展開が!この横穴が先ほどの出口部分に向かう一直線の単純な構造かと思っていたところ、十字路になっています(ビックリしすぎて十字路の写真撮るの忘れた・・)。左・右・直進・戻る、と一気に選択肢が4つにもなりました。くらやみやぐらと同規模だと推測した私の考えをはるか上を行く展開です。とりあえず外で確認した出口部分が方向的に左側だと思われるので左に進みます。しばらく行くと、思っていたとおり出口部分と思われる塞がれた箇所が発見できました。
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塞がれた出口部分 |
まさかのアクシデント発生
先ほどの十字路に戻ろうとしたところ、・・女性の話し声が聞こえてきます。私はオバケの類とか信じません。それなのに何故かこんな場所で女性の声が聞こえてきます。何を言っているのか聞き取れませんがかなり明瞭に聞こえてきます。しかも声は入口の方から近づいてくる気配です。「これっておかしくない?」と悩みます。仮に私と同じような物好きが偶然にも同時にこの横穴に入っていたとしても、まず女性がこんな所に来ることは100%ないでしょう。つまりこれは生身の人間の声ではないと確信した私のこのときの絶望感といったらどう表現したらいいのでしょう。しかも出口は塞がれてるし、この水没した地面では走ることもままならず逃げようもありません。
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水没した地面には何やら花瓶?やボール・木材などが落ちている |
しかしあまりにもその女性の話し声がハキハキしていることに違和感を覚えたところ「あっそうだ学校が近いからこれは校内放送の声が横穴の入口から聞こえてきているんだ」ということに気付きました。それなら合点がいくし、もしそうでなくともそう考えようと思いました。実際にもしばらくして話し声は聞こえなくなりました。ということで霊が見えるとかいう人の気持ちを疑似体験した一時でしたが、あ~本当にビックリした(笑)
まさかの出口
十字路に戻り中央の直進路を進みます。若干登り気味となった道を進むと今度は向こうに光が差し込んでいます。なんと!出口がありました。もの凄い安堵感です。人間ってやっぱり光がないと生きていけないのだと体感した気分です。出口から見えた光景はちょっと予想外で丘陵の中腹辺りとなっていました。あの塞がれた出口より随分と高い場所にいるのがわかります。先ほどの一件でちょっとビビッてしまったこともあってか、このまま強引に斜面を登って脱出しようかとも考えましたが、やはり「この先どうなっているんだろう?」という好奇心には勝てず再び横穴に戻りました。
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出口 |
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出口から見えた景色は急峻な崖だった・・ |
まさかの造作
またまた十字路に戻り今度は右側の道を行きます。今度はさらに深そうです。本当に突き当たりが見えません。暗すぎて光が暗闇に吸い込まれるようです。
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フラッシュを使わないとこんな感じ これでもペンライトを使用している |
しばらく行くと今度はまさかの階段が施されています。さらにその先には出口がありました。この出口は入口方向と同じ斜面にあるようです。
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まさかの階段 |
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階段下り 足元がグチャグチャなので下りは結構危険で気を抜いたら転びそう |
横穴の疑問
階段から戻りさらに奥へ進みます。ここでちょっと疑問が。防空壕ってそもそも避難するためにあるものだからこうした通路だけでなく部屋があってもいいと思いますが見つかりません。そう考えると何か所々で壁を塞いでいる造作がみられます。もしかしたら部屋部分は塞がれているのかもしれません。でもなんだったらこの横穴自体塞いでもいいかと思いますが、何か他に使い道があるのでしょうか。
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先を塞いだような造作 |
横穴クライマックス
さらに奥へ進むとまたまた上り道となり階段が施されています。ホントこの横穴深いなぁ~と感心していたところ地面に違和感を感じました。どんぐりのような小さい球状の粒が地面いっぱいに敷き詰められていてしかも何か音が聞こえてきます。耳を澄ますと何やら「パキパキ カサカサ」といった映画エイリアンで幼虫が卵から孵化するような音を思い出します。嫌な予感がしましたが思ったとおりその球状から触覚のようなものが見えています。なんと全部虫の卵みたいです。最も恐れていた展開です。しかもこれが恐怖のカマドウマだったらと思うと・・ この先どうなっているのか知りたいところでしたが、個人的に一番ダメな展開なのでこれにて横穴探検を終了して戻ります。残念・・
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上に釘のようなものが打ち込まれている 何に使ったのだろう |
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向こうに階段が施されていて地面には・・ |
横穴エピローグ
横穴を出ると陽の光が迎えてくれました。洞窟のような「この先ってどうなってるんだろう?」という展開に惹かれますが、やはり光のある場所が落ち着きます。ホッとしたところに足腰がガクッときました。ほんの20~30分の出来事だったと思いますが、先の読めない展開に無意識の極度の緊張があったのだと思います。尾根道を歩くときとは使う筋肉が違ったのでしょう。裏山を歩ききったいつものさわやかな疲労感とはまた違うものでした。ところでこの横穴は一体何だったんでしょう?出口がたくさんあるし、部屋もなかったし、これって防空壕なんでしょうか?しつこいようですがこれが玉縄城時代に施された抜穴が原型になっていたらロマンがあるなぁと今でも思います。
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龍宝寺の不思議な地形 |
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探索期間 2013年8月 2014年9月
記事作成 2014年10月4日