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山号寺号 功徳山早雲禅寺天嶽院
建立 明応四年(1495)
開山 虚堂玄白禅師
開基 北条早雲
天獄院(てんがくいん)は、玉縄から藤沢駅方面に向った村岡に所在しています。北条早雲の開基で、玉縄北条氏に関連したお寺です。北条早雲は、比較的近年に刊行されている著書には「伊勢新九郎盛時」とも記されています。
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Google map 玉縄 ①玉縄城主郭 ②七曲坂 ③久成寺 ④二伝寺 ⑤高谷砦 ⑥天獄院 ⑦龍宝寺 ⑧長尾砦 ⑨大船観音 ⑩大船駅 |
下画像は、ニ伝寺からも近い本在寺公園からの景色です。天獄院方面を向いているので、この景色のどこかに天獄院が写っているはずです、たぶん・・。上地図画像でいうところの④の位置から⑥方面を眺めています。ただ確認できたとしてもかなり遠くにあるはずです。それもそのはず、今回向う天獄院は、もう鎌倉の範疇ではなくモロに藤沢市です。
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本在寺公園から見た天獄院方面 |
天獄院が玉縄北条氏に関連する寺院であることから、こちらも玉縄城の城郭を担った可能性も考えられますが、市史などには何も記されていませんでした。二伝寺から高谷砦に向うのが往時の街道筋だったようなので、当時の立地としては少し外れているのかもしれません。そして二伝寺から天獄院を目指すと、途中に慈眼寺というこれまた玉縄北条氏に関連したお寺があります。
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慈眼寺から |
画像は、山門内から外を眺めたものです。慈眼寺は、前面道路から階段を登った高台に所在しますが、向こうに見える道路がまたここと同じような高さにあるのが伝わるでしょうか。迅速測図で村岡周辺を見ると、この辺り一帯が山となっていたのがわかります。そうした地形の名残りなのか、周辺はアップダウンのある起伏の激しい地形となっています。そしてようやく天獄院へ。
天嶽院縁起
天獄院によれば、もとは真言宗の不動院から始まるとありました。治承四年(1180年)、頼朝の鎌倉入りの際、頼朝がこの不動明王に大願成就の祈願したという言い伝えが残されています。そして時代が下って明応四年(1495年)、北条早雲が不動院を改め、曹洞宗の禅寺とし、虚堂玄白禅師を開山に迎え天獄院が創建されました。その後天正四年(1576年)に伽藍が焼失しますが、玉縄城主北条綱成・氏繁公父子によって復興されています。さらに、紀伊大納言徳川光貞によって七堂伽藍が完成されました。このときの境内の様子が『相中留恩記略』巻之十八に描かれているそうです。
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天獄院 |
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山門から参道・本堂へと続く直線が壮大です。参道の緑は、もみじがメインで、底部には苔が敷き詰められています。たまらなく美しい光景でした。また、伽藍がピカピカなのでちょっと驚きましたが、平成10年に室町時代の様式に統一して復興したとありました。
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本堂はどうやら檀家さんのみの立入りとなるようです。中雀門から回廊でつながった奥に本堂が見えます。なかなか見たことのない造りです。室町期を想定して復興したとありましたが、中世の伽藍もこのように豪華だったのでしょうか。
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中雀門から見える本堂 |
紅葉
山門から本堂に向う参道の美しさにシビれてしまい、紅葉の時期にまた来てみようと思っていました。ピークを逃しましたが、それでもやはりキレイでした。
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山門 |
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鐘楼 |
山門は唯一火災を免れたもので、水戸光圀寄進の江戸時代中期のものとありました。不動殿は、頼朝が祈願したと云う不動院を引き継いだものでしょうか。
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不動殿 |
行ってよかったのか微妙ですが、お寺に来たら裏山にも寄らせてもらうのが鎌倉遺構探索です。広大な裏山部分は、残念なことに、旧態地形など見当たらないほどに墓地として開発されていました。地形的には長尾砦の台地状尾根を思い出します。
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裏山からの景色 藤沢駅方面 |
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天獄院の台地状尾根 |
石切り跡
天獄院の前身に不動院があったとのことですが、お不動さまというと、個人的には、伊豆滝山不動や片瀬の岩谷不動などを思い出します。どちらも横穴があったので、ちょっと期待してしまいましたが、特にそういった造作は見当たりませんでした。石切り跡らしき壁面が残されています。
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石切り跡 |
東司も伽藍
禅寺ではトイレを東司と云います。建長寺や円覚寺などの大寺院では、大抵「東司」と記されているので、ご存知の方も多いでしょう。ここ天獄院の東司(トイレ)では、貼紙がしてあって、東司も七堂伽藍に含むと記されていました。伽藍という壮大な言葉の響きからは、法堂などのお坊さんがお仕事をする建物だけを数えるのかと個人的に思っていましたが、東司、そして浴室までを伽藍の一つに数えるそうです。とても勉強になりました。ちなみに、七堂伽藍とは、仏殿・法堂・僧堂・庫裡・山門・東司・浴室で構成されています。
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探索期間 2013年8月 2014年12月
記事作成 2015年1月15日