2018年5月24日木曜日

丸氏菩提寺・安楽寺

安楽寺

今回の向かった先は南房総市丸本郷にある安楽寺です。吾妻鏡にも登場する丸氏の居城であり菩提寺でもあったようです。さらに”やぐら”付きとのこと、期待の高まる史跡です!


丸郷と丸御厨


『吾妻鏡』治承四年(1180)9月11日条に、丸五郎信俊の案内で頼朝が丸御厨に訪れている様子が記されています。丸御厨は今回訪れる安楽寺周辺の丸本郷に比定されています。吾妻鏡の記述によると、丸御厨は源義朝が頼朝の成就祈願のために伊勢神宮に寄進した荘園で、さらにその義朝も父の為義から丸御厨を受け継いでいることがわかります。頼朝はここで感傷に浸り涙を流しました。亡き父が自分にしてくれたことだけでなく、石橋山の合戦に敗れ、安房国に逃れてきたという現在の状況もあったのでしょう。

Google map 安房国
①真野寺 ②安楽寺 ③正文寺

このとき(上地図画像)③正文寺から②安楽寺を目指しました。途中の道沿いには石像仏がただ置かれていたり、寺院もないのに”やぐら”だけが残されていたりと、安房国での”やぐら”の浸透は根深いものなのだと感じました。そして丸本郷周辺では現在も当時のままであるかのごとく延々と田畑が広がっています。緑一色の風景に目が癒されるようです。

道端にあった石像仏
道端にあったやぐら
道端にあったやぐらに付属する造作と石像仏
丸本郷周辺
丸本郷周辺


安楽寺城


安楽寺に到着。凄いです、背後に低山、前面はほぼ水田と、鎌倉の古絵図にあるような風景をそのままリアルに再現したかのような様相です。思わず微笑んでしまいました。昔の鎌倉にもこんな風景があったはずです。そして入口に「丸城主菩提寺」とあったので背後の山は城だったようです。

安楽寺


安楽寺


詳しい縁起がわかりません。天台宗で吉祥山極楽院安楽寺と云います。現地案内板によると、磬(けい)という平安末期のものとされる読経用具が伝わっているのでその歴史は古いようです。そして中雀山門は享徳元年(1452)に建立されたとのこと。境内には中世のものらしき古そうな石塔類が転がっています。

中雀山門
中雀山門
安楽寺境内


安楽寺やぐら群


本堂裏にある一段高い丘陵部に”やぐら”が施されています。こちらも正文寺同様、館山地方でみられる小さいサイズとは異なり鎌倉の”やぐら”と比べても遜色のない造りです。

安楽寺やぐら
丸家先祖代々之霊

安房地方にある”やぐら”の特徴の一つとして、別に大して高い位置にある訳でもないのに階段が施されている場合がよくあります。こちらの地方なりの羨道にあたるのかもしれませんね。

階段造作のあるやぐら

やぐら内部に色んな時代の石塔が置かれています。安楽寺の歴史の古さを物語るようです。こちら下画像の五輪塔なんかは専門家に「鎌倉期のものです」と言われたらそのまま納得してしまいそうな雰囲気です。

やぐら内部の五輪塔

境内に沿うようにそのまま丘陵部を伝って奥に行くことができます。丘陵中腹にも横穴が確認できました。

安楽寺裏山
丘陵中腹にあったやぐら

安楽寺城の名残りでしょうか、一部であからさまに地形に手が加えられた切り開かれたような箇所がみられます。

怪しい地形
安楽寺からの景色


丸氏


丸氏は安西氏・安東氏・東条氏などと肩を並べる安房を代表する氏族でした。少なくとも平安末期からこの地を治めていたことは確かなようですが、鈴木かほる著『相模三浦一族とその周辺史』によれば、『里見系図』に里見義実が安房白浜に渡海し三浦・丸両氏の兵力を頼って安西三郎を降参させたとあるそうです。また応永十二年(1405)には丸郷の丸孫太郎入道が群房庄を押領していたという記録が残されています。このことからも丸氏は三原の真田氏のように鎌倉期以降も在地領主として存続し、里見氏(正木氏)の配下となり家を伝えていたようです。

安楽寺のお花畑
安楽寺のお花畑

参考資料
〇鈴木かほる著『相模三浦一族とその周辺史』
〇五味文彦他著『現代語訳吾妻鏡』



史跡住所  〒299-2517 千葉県南房総市丸本郷518−1
カテゴリー 探索記事(房総・安房で鎌倉遺構探索)
記事作成  2018年5月24日

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