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朝比奈三郎義秀の伝承は本当か?

2015/02/07

三浦氏 人物

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朝比奈三郎義秀の伝承は本当か?


この記事では、鎌倉時代の「リーサルウエポン」、もしくは「戦場の死神」としか表現できない最強の人類、三浦一族の朝比奈三郎義秀という人物について取り上げてみました。

朝比奈三郎義秀


朝比奈三郎義秀は、和田合戦(1213年)での壮絶な活躍から、三浦和田一族でありながら、北条氏にしか都合の良いことを言わない吾妻鏡に、「神のよう」「彼と戦って死を免れない者はいなかった」「天地を震わせる」などと絶賛されました。その豪傑無双ぶりに、近世では歌舞伎の狂言や講談などで取り上げられるなど、現代にまでその勇姿が語り継がれています。

朝比奈門破り 勝宮川春章画

朝比奈三郎義秀は和田義盛の三男で、安房朝夷郡和田(南房総市和田町)、もしくは朝平南郷(南房総市千倉町)で生まれ育ったと云われています。『源平盛衰記』には、巴御前が母だとする説、『三浦古尋録』には、木曾義仲が父だとする説などがあります。もちろんこれらは真面目に検証すればすぐにウソだとわかる話ですが、それは彼が規格外すぎる人間だったからこそ、後世にて付けられた噂なのかもしれません。

三浦氏御三家略系図

三浦氏系図

三浦氏系図

三浦氏は、康平六年(1063)に前九年合戦の功績として、平為通が三浦郡を獲得し、衣笠城を築き三浦氏を称したのが始まりとされています。三浦氏系図には諸説あるものの、『新横須賀市史』によれば、良文ー忠道ー忠通ー為通ー為継ー義継ー義明という系譜が各諸系図...

朝比奈三郎義秀のウソみたいな伝承


『吾妻鏡』正治二年(1200)9月2日条によれば、この日は将軍頼家が御家人らを連れて小坪を遊覧していました。泳ぎが上手いと評判の義秀は、頼家に「この機会にその芸を見せよ」と命令され、辞退できず海に入ることになります。そして吾妻鏡にこのように記されています。

「海上に浮かんで数丁を往き来した挙げ句、波の底に入ってしばらく姿が見えなくなった。人々が不思議に思っていると、義秀は生きた鮫三匹を堤げて御船の前に浮き上がってきた。」


朝比奈三郎義秀 菊池容斎画

吾妻鏡は、北条氏を正当化するために事実を歪曲化する傾向がみられます。しかし小坪遊覧での出来事にはあまり政治的な要素はみられないので、義秀のサメを捕まえたという記述はほぼ事実かと思われます。そこで次に思うのが、人間がサメを素手で捕まえることなどはたして可能なのかという疑問がわいてきます。素手でしかも三匹も捕まえてきたという吾妻鏡の記述に、「やっぱりそれはウソだろ」と思わずにはいられません。

現在の小坪漁港

世界には信じられない人がいる


ウソウソと否定ばかりするのも悪いので、実際に人間が素手でサメを捕まえるような事例があったのかネットで調べてみました。その結果、なんとあったのです。

ロイターの2007年のニュースに「オーストラリアの男性が体長1.3メートルのサメを素手で捕獲した」とあります。

どうやらその男性は、釣りをしている最中に擬似餌を追いかけるサメを発見し、そのまま素手で捕獲したそうです。しかもかなりウオッカを飲んでいたようで、本人の後日談として「酔いが覚めてから自分のやったことを思い出し、少し馬鹿なことをしたと反省しました」とあります。

いくら酔っ払っていたとはいえ、オーストラリアに義秀級の超絶猛者がいたことに開いた口が塞がりません。ということで、このことからも人間は素手でサメを捕まえることができるということが現代でも証明されました。吾妻鏡の義秀の記述はほぼ事実だろうという結論に至ります。

ユニバーサルスタジオ

もう一つの伝承


そして朝比奈三郎義秀のもう一つの伝承として、朝比奈切通を一夜にして切り開いたという言い伝えがあります。

このウソのような伝承も本気で検証してみると、もし仮に義秀が本当に切り開いたとしても、一晩では尾根を通りやすくするために木々の伐採をするぐらいが限界でしょうか。でも、それでも義秀ならやってくれるかも・・という淡い期待を抱かずにはいられませんね。

朝比奈切通し

その後の朝比奈三郎義秀


和田義盛対北条義時の世紀の一戦、和田合戦の窮地を脱した義秀は、船で安房から西国に向う途中、熊野灘で遭難し、太地(和歌山県)に漂着し住みついたという伝説があります。そして太地捕鯨を取り仕切ってきた和田姓の一族がその義秀の後裔であるといわれています。

ちなみに『吾妻鏡』にある和田合戦の死亡者リストに義秀の名が記されています。それが真相だと思いますが、そこはやはり人気者。「生きていた」伝説が後世にて創作されていくのでしょう。

義秀が育った朝夷郡の景色

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