鎌倉十二所と瑞泉寺裏山をめぐる天園ハイキングコースに行ってきました。古道あり!遺跡あり!そしてハイキングなので当たり前ですが自然あり!の魅惑のハイキングコースを歩いてきたので、皆さんにもご紹介しようと思います。
基本情報
コース名 :十二所・胡桃山ハイキングコースカテゴリー :ハイキング
出発地点 :明石橋
到着地点 :バス停十二所神社
最低標高点 :22m
最高標高点 :110m
距離 :約2.85km
所要時間 :大よそ60分
体力消耗度 :2/5
国土地理院の地理院地図 |
①明石橋 ②弁天社 ③大江広元の墓 ④瑞泉寺分岐 ⑤ショートカット分岐 ⑥首やぐら ⑦御坊ヶ谷分岐 ⑧お塔の窪やぐら群 ⑨バス停十二所神社
天園ハイキングコース明王院入口から胡桃山・瑞泉寺裏山を経て御坊ヶ谷、もしくは馬場谷(番場谷)・霧ヶ沢などとも呼ばれる十二所神社のある谷戸に下りて行きます。鎌倉駅からバスで「金沢八景行き」「鎌倉霊園正門前太刀洗行き」「ハイランド循環バス」のいづれかに乗車し「十二所」にて下車(ハイランド循環に乗車した場合は「ハイランド入口」)すると明王院からも近い明石橋交差点がすぐ近くにあります。駅前で飲料水やおやつを買い忘れた方は目の前にミニストップがあるので便利ですよ。
明王院入口から一気に標高67mまで登り、弁天祠のある辺りにかけてゆっくりと標高90mに至ります。その後はそれほど高低差はありません。ちょっと厄介なのが吉沢川が流れる御坊ヶ谷一帯が常にぬかるんでいることでしょうか。鎌倉のハイキングコースといえどトレッキングシューズの使用を推奨します。
ハイキングコースのポイント
『十二所地誌新稿』にある「わからなくなった道」として「稲荷小路又は梶原より二階堂・浄明寺方面へ」「明王院より二階堂方面へ」という興味深い記述があります。今回通るハイキングコースはまさにその「わからなくなった道」が交差する丘陵部です。また遺跡の宝庫でもある瑞泉寺裏山、そして鎌倉の秘境とも言える御坊ヶ谷を通過します。つまり古道・遺跡・自然と、鎌倉のハイキングコースでこれ以上何を望むものがあるのかというほど魅力がつまっています。
天園ハイキングコース |
十二所・胡桃山ハイキングコース
鎌倉駅からバスで向かいバス停「十二所」、もしくは「ハイランド入口」で降車すると大よそ明石橋交差点の近くになります。明王院を囲む絶壁の丘陵は遠目から見ても迫力があります。杉本城の尾根筋と繋がっているので城郭だという説もありますが、ただの「石切り」だという説もあります。こればっかりはご自身で判断してみてください。
これから登る胡桃山 |
鎌倉のハイキングコース入口の大抵は「えっ?ここ行くの?」という場所が多いのですが、ここ天園ハイキングコース明王院入口もかなりのレベルです。画像の左側にある階段を登って行きます。他人の家の玄関に入っていく気分です。そして尾根まで一気に登って行きます。
天園ハイキングコース明王院入口 |
尾根に出て少し歩くと土橋状になります。特に尾根の左側の梶原ヶ谷側の地形が掘割状のように窪んでいます。道のような気もしますが、たぶん両側から石切りされた影響でしょうか。
胡桃山尾根道 |
そして祠のある場所に到着。初弁天といいます。それにしてもよくよく考えると山中に弁天さまって珍しいですよね。何か水にまつわる歴史があるのでしょうか。
初弁天社 |
弁天祠の右側を進むと大慈寺(跡)裏山部分の尾根となります。その道は結局行き止りとなりますし、よくわからない怪しい地形以外これといった発見はありません。順当な道筋を進みます。すると巨大な掘割状地形が現れます。
もの凄い掘割状 |
掘割状はそのまま大楽寺のあった小谷戸に続いているので古道跡だと考えたいところですが、元々こういう地形なのかもしれませんし、山津波などの土砂崩れの跡、もしくは石切りの影響も考えられるでしょうか。これが十二所地誌にあった「わからなくなった道」だったら面白いと思いますが、いまいち確証に至る決定打がありません。
掘割状をあとにして進むと今度は尾根道が上(左)と下(右)で岐れる箇所が現れます。上(左)に行くと大江広元の墓です。もちろんご挨拶していかないと。
上(左)と下(右)の分岐路 |
大江広元の墓 |
山中で拝むこの古めかしい五層塔は何度見ても飽きません。江戸時代にやって来た毛利・島津の関係者らの目をくらますため、十二所の村人たちが一度谷底に落としたと十二所地誌にありました。またこの辺りから尾根道が胡桃ヶ谷に沿っていきますが、丘陵部壁面がほぼ石切りされています。
丘陵部壁面 |
尾根から見た胡桃ヶ谷 |
尾根道を進むと相変わらず怪しい地形が現れますが、ともかく周辺一帯が石切り場とされていたようなのでよくわかりません。
怪しい掘割状地形 |
怪しいコの字型地形 |
瑞泉寺分岐点に到着。瑞泉寺方面と天園(覚園寺・建長寺)方面への分岐点です。お気に入りの瑞泉寺に寄りたいところですが今回は遠慮して、せめてあの素敵な掘割状地形だけでも見ていこうと思います。
瑞泉寺分岐 |
瑞泉寺の南側の尾根道は今は掘り切られてしまいましたが、往時では杉本城から尾根で繋がっていたので城郭としての造作の可能性が鎌倉市史などに記されています。ことの真偽は置いといて、いつもながら見事な掘割状です。最近の暴風雨の影響からか、木が倒れていました。
瑞泉寺裏山の掘割状 |
瑞泉寺裏山の掘割状 |
それでは、見事な掘割を見れたため気がすんだので天園方面へと戻ります。瑞泉寺分岐から天園方面に進むとすぐにまた案内板が現れます。この案内板が示さない道が後ろにあります。ここを下りて行くと御坊ヶ谷の「天園ハイキングコース十二所側入口『CAT XING』」に出ます。もの凄いショートカットになりますが、このハイキングコースのメインイベントはこれからなのでお勧めはしません。
御坊ヶ谷に下りて行けるショートカット分岐点 |
ハイキングコースはこの辺りから瑞泉寺裏山に沿うように歩きます。そしていきなりきました、古道跡。こちらもいつ見ても見事な古道跡です。瑞泉寺側に下りて行く道は地形の崩落などで失われたのか見当たりませんが、ハイキングコース側ではそのまま道が続いています。
古道跡 |
古道跡 |
そしてこの辺りはハイキングコースから一段低い場所に平場が続いています。城郭用語でいう帯曲輪状態です。帯曲輪は大抵にして道跡である事例が多いので、これも瑞泉寺から登ってくる道の名残りなのだと思います。ハイキングコース沿いにあるやぐらに向かうための道だったのでしょう。
ハイキングコースと一段低い平場 |
ハイキングコース沿いにあるやぐら |
ハイキングコースより一段低い平場を探検して進むと、あれっ、なんかどこかに迷い込んでしまったようです。これはもしかしたら一覧亭跡・・・。入っちゃいけない場所ですよココ。
瑞泉寺一覧亭跡 |
せっかくなのでちょっとお邪魔すると、凄い!富士山が見えます。一覧亭は夢窓疎石先生が富士山の眺望も計算して造った庭園跡です。ここから見える富士山はただの富士山じゃありません。夢窓疎石先生や鎌倉公方義詮などが和歌を詠みながら眺めていた景色です。素晴らしい!
一覧亭跡から見えた富士山 |
一覧亭跡から見えた箱根山系 |
ということで、まだ鎌倉にあまり詳しくないため偶然入り込んでしまいましたが、いや~びっくりしました。瑞泉寺さん申し訳ありませんでした。それでは先に進みます。
瑞泉寺裏山ハイキングコース |
一覧亭跡を過ぎるとハイキングコース右手の地形が急に盛り上がります。十二所地誌新稿がいう茅場山、グーグルマップがいう胡桃山となります。この山を右に入って行くと『新編鎌倉志』にも記されてある北条首やぐらとなります。もちろんご挨拶していきます。
北条首やぐら |
北条首やぐら |
北条首やぐらを過ぎて少し歩くと今度はハイキングコース左手に瑞泉寺やぐら群があります。何も案内板もないので、左手に下りて行けそうな道があったら下りてみてくださいとしか言えません。羨道部分に宝塔の浮彫りが刻まれたやぐらを見つけられたら「当たり」です。なかなか他では見ることはできません。
瑞泉寺やぐら群 |
宝塔の浮彫り |
それにしてもこの辺りのハイキングコース尾根道はまるで瑞泉寺十八曲のようなキレイな削り方です。中世にハイキングコースなんてなかった訳ですから、本来はこの辺りまで庭園造作だったんじゃないかと思ってしまいます。やぐらもあるし。
まるで瑞泉寺庭園十八曲の続きのような部分 |
ハイキングコース沿いにあるやぐら |
瑞泉寺やぐら群からハイキングコースに戻って進むと尾根道が登りとなる辺りで右側に下りて行ける道があるのでそちらを進みます。貝吹き地蔵まで行ってしまったら行き過ぎです。
ここを右に下りて行く |
御坊ヶ谷・吉沢川に下りて行くこの道はあまり使われないのか、天園ハイキングコースとは様相が一変します。ゴツゴツしたいかにも古道といった感じで、熊野古道を思い浮かべます。まぁ熊野古道行ったことないんですけどね。
鎌倉の熊野古道 |
しばらくすると石切り跡、お塔の窪やぐらなどが現れます。
石切り跡 |
お塔の窪やぐら |
この辺りはジャングル |
紅葉していたらとてもキレイそうな木を見つけました。ちなみに御坊ヶ谷は知る人ぞ知る紅葉の名所です。
もみじの木 |
紅葉してなくてもキレイだね |
そして吉沢川に合流すると、「どこの庭園じゃい!」とツッコミたくなる美しい景観があります。
吉沢川沿い |
吉沢川沿い |
以前に『鎌倉十二所の廃道・廃谷戸』という記事をアップしました。そこで記した十二所の廃道のひとつ「女乙坂」を探してみたのですが、もしかしたら下画像のこれでしょうか。方向的に鎌倉霊園に行けるはずなのに道が途中から失くなっていました。もしくは見えなかっただけかもしれません。・・やっぱりよくわかりません女乙坂。
女乙坂? |
そのまま進み旧態地形を進むと住宅街となり、もう一度吉沢川を渡ると十二所神社とバス停がすぐ近くです。
御坊橋 |
十二所神社の裏山を御坊山といいます。先ほどの女乙坂の先にある山です。今は行っても鎌倉霊園があるだけですけどね。
ということで、十二所・胡桃山ハイキングコースでした。とにかく遺構(古道)と遺跡(やぐら)だらけなので歩いていて飽きません。また御坊ヶ谷の、石切り場とされた時代から何も手を加えられてないような自然も魅力でした。
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