伊豆山神社参道
今回は伊豆山神社の873段もある参道にスポットを当ててみました。参道とはいえ、873段もあると参道だけで色んな場所や発見があるんですよ。
基本情報
名称 :伊豆山神社の参道
所在地:伊豆山神社
住所 :静岡県熱海市伊豆山708−1
伊豆山神社参道
伊豆山神社の参道は、上記したように873段から成り、距離にして大よそ618m、そしてヤマレコによれば、伊豆山神社本殿のある場所が標高153.4mとのことなので、参道最下段がほぼ海岸と同じ高さの海抜ゼロメートルであるため、比高差もそのまま大よそ153mとなります。ちなみに153mというと、鎌倉で最も高い太平山(159m)とだいたい同じ高さになります。
それでは、最下段の走り湯温泉洞窟からスタートです。行ってみましょう!
伊豆山神社参道16段 走り湯温泉洞窟
伊豆山神社参道から伊豆浜の景色
伊豆山神社参道173段
伊豆山神社参道220段 国道沿い
伊豆山神社参道
伊豆山神社参道648段 市道沿い
伊豆山神社参道657段
伊豆山神社本殿
伊豆山神社本殿辺りからの景色
市道は旧道で古道の可能性大
下絵図は宝暦八年(1758)の年号が記された『熱海之絵図』です。①伊豆山神社本殿から浜にある②走り湯までの壮大な参道が描かれています。絵図からは、往時では参道沿いや境内周辺に12の僧坊が建ち並んでいたことが確認できます。一方で最盛期には64棟もの僧坊・修験坊があり、3800名の僧兵が滞在していたと現地案内板にありました。
熱海之絵図
①伊豆山神社本殿 ②走り湯 ③現在の市道位置
注目すべき点は、現在の①伊豆山神社境内を出た辺りに③市道が通っていますが、絵図にも同じ場所に同じような形状の道が描かれていることです。つまり伊豆山神社参道を横切るこの③市道は少なくとも江戸時代からあった道を踏襲したものである可能性が高く、またさらにポジティブに想像を膨らませると、この③市道を西(絵図下方)に行くと般若院や逢初橋などがあることから、既に中世からあった道であることも想定できます。ちなみにどうしてそんなことになったのかよくわかりませんが、逢初橋は④国道沿いにも存在します。
Google map 熱海 赤線=参道
①伊豆山神社 ②走り湯温泉 ③市道(黄線) ④国道(黄線)
『吾妻鏡』治承四年(1180)8月19日条に「土肥の辺りから北条にやってくる勇士たちが走湯山を往還の道としていた。そのため狼藉が多くみられたと走湯山の衆徒が訴えてきたので、武衛は自筆の御書を送り宥めた。」(吉川弘文館現代語訳吾妻鏡より)とあります。
狼藉をはたらいたその土肥の勇士たちは、もしかしたらこの③市道の辺りを通っていたのかもしれない、なんて想像が膨らみます。
アタニャン地区
参道途中に猫の集会所地区がありました。熱海の猫なのでアタニャンです。猫ってある意味その街を表す指標にもなりますよね。例えば都心の猫はやっぱり色んな人がいるので警戒心が強くなるし、一方で鎌倉の猫は観光客に可愛いがられているので犬かと思うほど懐いてきます。
そしてここ熱海の猫はというと、ノラが多いのか開放的に飼われているのかよくわかりませんが、ワイルド系が多かった気がしました。声をかけても逃げもせずただ通り過ぎていく者もあれば、一応かまってはくれるんだけど「いいからもうどっか行けよ」という雰囲気の者など、人に依存しない独立型のしっかり者が多かったようでした。
熱海で一番の美形
「もうどっか行けよ」
参道でくつろぐチームアタニャンの一員
参道でくつろぐチームアタニャンの一員
この目つきと存在感 ここのボスかも
熱海で生きるということ
873段もあるので途中で飽きて猫と遊んだりしましたが、それにも飽き足らず地元の方らしき女性とも話してみました。そこで気付いたことがあります。参道には市道と国道が横切っていますが、873段もあるのでその市道と国道の間だけでも428段もの階段がある訳ですよ、ということはその間にある家に住んでいる人は車で直接自分の家には行けないんですね。
実際にも話をしたその地元の方は、家にお客さんが来ても国道沿いに車を停めて階段を登ってきてもらうと話していました。何事にも裏・表、そしてメリット・デメリットがあるように、熱海という素敵な土地に住むには、やはりイイことばかりではなく、延々と階段を上り下りしなければならない事情もあるようです。
参道から何気なく見える素敵な景色
地元の方との話も終え、さらに進むと、今度は杖をついた腰が90°曲がったおばあちゃんが参道の階段に向かっている姿が目に入りました。その様子ではどう見ても階段など登れないだろうと思いつつも、階段の方に向かっているので興味本位でその姿を見守っていると、ついにそのおばあちゃんが階段を登り始めたではありませんかっ!!!しかも姿勢は90°腰が曲がったままという奇跡的な状態で・・。オバマ元大統領の名言「Yes We Can」が頭によぎりました。
キターーーーーー!まさかのおばあちゃん!w
ということで、伊豆山神社のほんの参道部分だけの紹介でしたが、873段もあるだけあって、歴史や土地の事情など、ここだけでも色々ある訳ですよ。
伊豆山神社攻略
一般の観光客であれば本殿位置にある駐車場まで車で向かってしまえば済む話ですが、史跡めぐりとして伊豆山神社に向かう人はそうはいきませんよね。参道を歩破しなければ伊豆山神社に行ってきたとは言えませんから。
また参道を登り切ったとしても、今度は本殿(標高153m)~本宮(標高390m)間も延々と登りが続くため、伊豆山神社の全てを堪能するにはそれなりの健脚が求められます。せっかくですから参道最下段にある走り湯温泉洞窟も見学したいし、最頂部にある本宮にも行きたいでしょうから、伊豆山神社に限っては史跡めぐりというより山登り感覚で気合を入れて訪れた方がいいでしょう。
伊豆山神社本殿から白山社経由ルート
子恋の森公園
伊豆山神社本宮
現地案内板によれば、伊豆山神社本殿から白山神社・結明神社を経て本宮までの所要時間は55分とのことです。もちろん時間はあくまでも目安なので一般成人レベルの健脚・体力であれば目安の半分ぐらいの時間で行けますよ。
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